ベテランになるとなぜ走れなくなるのか?『体力』に関する問題
2025/01/21
30代半ばに差し掛かると、以前よりも息が上がりやすくなったり、試合を通した運動量の低下がGPSデータに現れたり、いわゆる『走れなくなる』という変化が多くの選手に見られる様になりますが、
それらの対策における研究をする中で、私自身もこれまで数多くのトレーニングメニューを実践し、実際の試合の中でトレーニング効果の比較を繰り返してきました。
今回はその実験結果の発表記事となります。これから解説する“加齢に伴う3つの肉体変化“をに対して的確な対策を講じれば、ほとんどのベテラン選手の『走れなくなる』という問題は解決します。
また、今回紹介する対策は加齢によって失われた運動量を取り戻すための対策ですので、若い頃からスタミナに問題があった選手の場合はまた別の対策が必要となります。
ここでは、過去最高を誇った時代の運動量を取り戻す。というテーマに向けた回答となりますので、『以前よりも走れなくなった』という問題を抱えた選手へ向けの記事となります。
それでは早速、ベテラン選手の運動量を低下させる3つの肉体変化と、その対策について書いてご紹介します。
変化1:サッカー界は加齢によって酸素を取り込む機能が下がる事を知らない。
これはとてつもなく重要な項目であるにもかかわらず、サッカー界では非常に軽視されているポイントです。以下のグラフにもある様に、酸素を取り込む為に必要不可欠な“ヘモグロビンの値”は、加齢によって誰であっても例外なく減少していきます。
(年齢別ヘモグロビン濃度の平均値)

ヘモグロビンは酸素を体内に取り込む役割を果たすため、この値が減少すれば呼吸によって酸素を取り込める量が少なくなり、試合中の運動量は確実に低下します。Jリーグでも少しプレスに行くだけで息が上がっているベテラン選手を目にする事がありますが、このような選手は単純に高濃度の鉄分サプリを摂取するだけで劇的に改善することが多いです。
サッカーの様な強度の高いスポーツであるなら、最低でもヘモグロビン濃度を15g/dL以上の値に持っていくことが必要です。Fe系のサプリメントを摂取することで、おおよそ誰であっても15g/dL後半の濃度を維持することができます。
加齢によってヘモグロビンの値は誰であっても必ず減少するものです。30歳前後の年齢に差し掛かり、『以前よりも息が上がりやすくなった』と自覚がある場合は、一度病院で血液検査を行い、血液検査でヘモグロビンの値を確認することをお勧めします。
私は28歳を過ぎたあたりから試合中の息切れ回数が多くなったため、Fe系のサプリメントでヘモグロビン数値を回復させたことでこの問題を解決した過去があります。これ以来何度か自分自身のヘモグロビンの値を調査することがありましたが、私の場合はFe系のサプリの利用を停止することで、14g/dL台までヘモグロビンの値が減少することがわかっています。
一般的にヘモグロビンの値が1変わっても自覚症状はないものとされていますが、高強度の運動時には誰もが簡単に自覚できるほど、息の切れやすさに違いが生じます。呼吸が整った状態でプレーできる時間の割合が増えることが、どれほど選手のパフォーマンスに影響を与えるかは、既に説明の必要はないでしょう。
それほど、ヘモグロビン濃度は選手のパフォーマンスに大きな影響を与えるものです。
変化3:体脂肪率は試合中のフィットネスレベルの根幹を担う
30代に突入すると多くの選手が若い頃よりも体脂肪がつき易くなります。サッカー界ではこういったベテラン選手の体型変化に強く言及するシーンはあまりなく、何となく『高いよりは低い方が良いだろう』程度の認識にとどまっています。
しかし、体脂肪率が高まれば、選手のパフォーマンスはサッカー私の初心者が見ても分かるレベルで大きく低下します。一般的に選手の体脂肪は加齢に伴いゆっくりと増加していくものです。そのため、体脂肪増加によってパフォーマンスが大きく下がっている事にはなかなか気がつきません。
ですが、選手の体脂肪が増えることで、運動量だけでなく、動作のキレ、ダイナミックさ、トップスピード、瞬発力、全てにおいてのアスリート性能が降下します。
私は短い期間に体脂肪率だけを変化させ、試合中の動作にどれほどの違いが出るかを調査した事がありました。その時の動画をまとめたので、以下に掲載します。
動画は食事管理のみによって体脂肪率を変動させ、日常のトレーニングに関しては全て同率のものに揃えてプレーを観察しています。
(動画)
具体的に何がどう違うのか。説明の必要も無いほどの違いが見られると思います。これほどの違いがゲーム中の動作に出るにも関わらず、プロの現場であっても体脂肪の高いベテラン選手は非常に多く見られます。現時点で体脂肪率の高いベテラン選手は、シンプルなダイエットを行うだけでプレー中の動作に上の動画と同等レベルの変化を得る事ができます。
変化2:疲労回復の速度低下
ここからは、三つ目の要素である疲労回復の速度低下について、先の2つとは異なり、3つ目の要素はコンディション面についてです。
ベテラン選手のコンディショニングに関しては、オランダのコンディショニングコーチ‘‘レイモンド氏’’が『選手の年齢によってトレーニングの強度や休養の期間を変えるべきである』と表立ったコメントも残っていますが、客観的なデータを用いることで、『具体的に誰にどれくらいの休養を与えるべきか?』という部分までより明確に見るができます。
20代と30代の選手では疲労回復の速度に違いがある事は多くの人が既に知っています。では、実際にどのその回復速度は年齢によってどれほどの違いがあるのかと言えば、それは年齢別の細胞更新速度(細胞分裂の速さ)を確認する事で把握する事ができます。
年齢別の細胞更新速度は以下の通り。
【年齢別細胞更新速度】
10代:20日
20代:28日
30代:40日
40代:55日
細胞分裂の早さの違いを参考にすれば、20代の頃に体力が完全回復した日数でも、30代になれば70%程度の状態までしか回復しないという事がわかります。しかし、この30%の差というのは、あくまでお互いが平等な状態でスタートを切った際に現れる差に過ぎません。
シーズンが始まる1週目であれば選手全員が完全に疲労を抜いた状態でゲームに望む事ができますが、ベテラン選手は2週目からは理論上はー30%からのスタートです。そして次の週はさらにという形で、疲労が蓄積していくことになります。シーズンが進めば進むほど、若手とベテランのコンディションの差はどんどん開いて行くのです。
近年ではベテラン選手と若手とトレーニング強度を分けているクラブもありますが、その回復の速さには10代から40代までこれ程大きな違いがあるということを理解しトレーニングに反映させる事が出来れば、ベテラン選手のフィットネスパフォーマンスは大きく向上します。
私は毎週のトレーニングマッチが終わった際には、自分自身のコンディションに採点を行っていますが、週に5回の活動(4回の練習と試合)をしていた日本のクラブに所属していた期間より、週に4回(3回の練習と試合)の活動が主流の海外クラブに所属していた時の方がコンディションのスコアが高いという記録が残っています。
この様な傾向は20代前半時にはなかった傾向です。30代を迎えれば、多くの選手の身体がより長い時間の休養を必要とする様にな流のです。
たったこれだけでベテランの『走れない』は解決する。
・ヘモグロビン数値を15g/dL台後半に調整
・体脂肪率を10%以下に調整
・疲労を抜く
本来であればこれに加え4つ目の『全身の筋肉の柔軟性の維持』が加わるのですが、全身の柔軟性に関しては余程の硬化が見られなければ先に紹介した3つの要素よりも影響度は小さく、尚且つここまで来ればOKという基準を作りづらいため、ここでは割愛させていただきました。
箇条書きにしてみれば、非常に単純でテクニカルな要素が全く含まれない解決法ばかりですが、これらを満たすことができているベテラン選手が殆ど存在しないからこそ、ほとんどのベテラン選手は『運動量の低下は避けられないモノである』と、ある意味での妥協をしながらプレーしているのです。
現在のところ、今回ここに書いた対策を実践した選手の最高齢は38歳となりますが、この3項目を達成したにも関わらず『走れない』という悩みを解決できなかった選手は、全選手中1人もいません。
30代を超えて『試合中に走れなくなってきた』との自覚がある選手は、是非着手して見てください。『ベテランとしてのサッカー人生が変わった』と思えるほど、大きな変化を獲得できることを約束いたします。