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サッカー界で“才能”と言われるものの全てを解明し、世界一のトレーニング理論を作ろうとする記録

今回は、サッカーのプレークオリティにとてつもなく大きな影響を及ぼす『姿勢』について、研究における一部の情報を公開します。

プレー中における選手の『姿勢』について、その重要性は業界でも頻繁に語られるわけですが、そのほとんどは視野の確保や、走りの質に関するものばかり。それ以外の視点から語られることはほとんどありません。

確かに、姿勢の良し悪しは視野の確保や走りの質に影響を及ぼします。しかし、姿勢がプレーに及ぼす影響について、最も重視すべき点はそこではありません。

と言うことで、今回はサッカー選手の姿勢を考える上で、“全く新しい指標“を皆さんに知っていただきたいと思うのですが、まず、サッカーにおいて「姿勢は良い方が良いプレーができる」という考えが、そもそもの間違いという事を言っておきたいと思います。

私がこれまで、『身体の形こそ最もプレースタイルに影響を及ぼす』と当ブログで解説しているように、良い姿勢には良い姿勢のメリット、悪い姿勢には悪い姿勢特有のメリットがあります。

一般的に言う『悪い姿勢』とは、主に背筋が前に倒れた『猫背』を指していると思うので、今回は正しい姿勢『非猫背』と、背筋の曲がった『猫背』のそれぞれの特徴を解説し、未だ世界の誰も知らないであろうサッカーにおける姿勢の秘密を公開します。

姿勢がプレーにもたらす影響

まず良い姿勢についての解説から

選手の姿勢がプレーにもたらす影響は複数の項目に分類されるわけですが、中でも特出して重要なものは、

『ボールの置き所』になります。

よく、プロのサッカー解説者や指導者がテレビで野中で『一流選手は足からボールが離れない』といったように、あたかも訓練によって獲得された技術のように語っていますが、それは全くの間違いです。

なぜなら、ボールコントロール時にボールと身体がどれほどの距離を取るかは、選手自身の身体の形状によってほぼ決まっているからです。

簡単に説明すると、主に選手の顔の位置が前に押し出されればボールタッチの位置は前方へ、顔の位置が下がれば、それだけボールタッチの位置は後方へ下がります。

つまり、背筋を伸ばせばそれだけ顔の位置は後方に下がるわけですから、ボールタッチの位置はそれだけ自分の足元近くに下がり、対峙する相手から遠い位置でボールをキープできるようになるということです。

(ボールタッチの深さは選手の身体の形状が決める)


これが、背筋を伸ばしてプレーする大きなメリットの
1つになるわけですが、これについては他の記事でも頻繁に解説しているので、深い解説は必要ないと思います。

正しい姿勢が生み出すプレー2

次に、良い姿勢でプレーするメリットの“二つ目“を解説していきたいのですが、その正体を明らかにするには、選手がボールを操作する際の“足の軌道“に注目する事が重要です。

ボールタッチをする際、その足の軌道を図に表すと、以下のようになります。

ここでは、ボールをタッチする場所を緑の点で記していますが、この点より手前の軌道は、全てボールをタッチする際の『予備動作』となることがお分かりでしょうか。

そつまり、背筋を伸ばし顔の位置を後方へ下げることで、その分ボールタッチの予備動作が小さくなり、

ボールタッチの全てが読まれにくくなるのです。

例えば、現在の日本代表で最も良い姿勢でプレーしているのは、久保建英選手であると言えますが、彼のパスやドリブル時に発動するボールタッチは、非常に予備動作がコンパクトに見えるはずです。

これは、決して“練習”によって身につくものでは無く、彼の持つ美しい姿勢こそが要となって作られている動作です。同じ姿勢を持たない選手が訓練によって真似を試みても、彼の様なコンパクトな予備動作を作ることは出来ません。

実際に、有名選手でも高いボールキープ能力を持ち、非常にコンパクトな動作でボール操作する選手は、姿勢の良い選手ばかりです。

画像

予備動作の少ないコンパクトなボールタッチを自動的に生み出す姿勢。これは技術云々以前にボールタッチ全てに影響を及ぼすため、パス、ドリブル、トラップ、全てをノーモーション化する事ができる凄まじいメリットなのです。

レアルも知らない猫背の秘密

ここまでで、『サッカー選手の姿勢』に関して、おそらく世界中のどこにも語られていないであろう情報をひとつ出したわけですが、

ここまではまだまだウォーミングアップに過ぎません(笑)

次は、曲がった背筋『猫背』について、レアルも知らないそのメリットを解説していこうと思います。

先ほど、正しい姿勢をとることでボールを他タッチする位置が体感部の近くになるというメリットを語りましたが、もし、体感部とボールが離れることが利点となるプレーがあったとするなら、それは猫背である利点になることになります。

先ほど述べたように、プレー中姿勢が曲がるほど、それに応じてボールタッチの位置は前方に出て行くわけですが、これは相手にボールを晒してしまう反面、

常にボールを蹴るための“助走“を確保している状態にあるとも言えます。

背筋を曲げることでその重心を前に押し出している彼らは、パスコースを見つけた瞬間、瞬時に強いボールを蹴る事ができるという利点を持っているのです。

一般的に、一流選手は美しい姿勢を持っている事が多いのは間違いありません。しかし、時折現れる猫背タイプの一流選手、彼らは多くの場合で中央から攻撃をコントロールするパサーとして出現します。

遠藤保仁

中村健剛

ブスケッツ

シャビ

このこと理解するために、非常にわかりやすい動画がネット上に落ちていたので、掲載します。

動画は近年有名になったフロンターレのパス練習ですが、動画を見た限りでは一見〇〇選手が最も美しいフォームでこの練習を行なっている様に見えますが、注目すべきは中村剣豪選手のボールタッチの位置です。

他の選手と比べ、中村選手はトラップの際自分の身体がコートの外に出ている事が多いのがわかると思います。これは、中村選手は他の選手と比べ、身体から離れた位置でボールタッチを行なっている一つの証になります。

さらに言うと、中村選手と〇〇選手を比較すると、〇〇選手はボールが身体から離れた際にバランスを崩し、逆に中村選手はボールが足元不覚に入りすぎた時にバランスを崩している事がわかると思います。

これが、私が『身体の形状によってボールタッチの位置は決まる』と言ったわかりやすい事例の一つと言っても良いでしょう。この両者を『パス』という側面から分析した場合、

近くにパスを渡すだけなら両者に大した違いはありませんが、距離の離れた味方へ瞬時に強いパスを供給するシーンにおいては、常にボールから身体が離れている中村選手の方が有利となります。

この『一歩の助走距離』を生み出しているのが、彼の曲がった姿勢なのです。

__猫背の秘密その2__

さらに、この『猫背タイプ』はその猫背具合によってドリブルの強力な武器へ変貌することもあります。

猫背タイプの選手は顔が前に出ることによって、その重心も同時に前に出るわけですが、その猫背具合が緩やかで、若干首だけが前に出ているような形状をとる場合、全速力でのドリブル時に非常に有利に働く事例が存在します。

このことを理解するためには、ドリブル時、ボールにタッチする足の動きに注目する必要があります。

以下の赤線はボールをタッチする際に足が描く軌道になるわけですが、この軌道のどの部分でボールにタッチするかによって、ドリブルの質は大きく異なるのです。

ドリブル時の足の起動(図)

実は、ドリブル時にどれほどの強さでボールが押し出されるかは、ボール保持者の心がけや技術よりも、この軌道上のどのエリアでボールをタッチするか?の方が重大な関わりを持ちます。

足の回転構造上、足の軌道の手前でボールをタッチするほど、ボールは強く前に押し出されます。つまり、良い姿勢を作ればボールタッチの位置は深くなり高いキープ力が作られやすい一方で、このタイプの選手はドリブル中、全速力で加速すればするほど、ボールと身体の距離は離れやすくなり、その分ボールロストの可能性が上がるという傾向があるのです。

一方で、顔の位置が前につき、理想とされる姿勢よりも若干前傾の姿勢を取る選手は、足の軌道で言えば前のエリア、足の動きがやや減速し出すエリアでボールをタッチします。そのため、押し出されるボールは前者の選手と比べ弱くなり、トップスピードの際にもボールが体幹部から離れにくくなります。

伊藤純也、宇佐美貴史、若き日のメッシ、ロナウドなどがこのタイプにあたり、どれだけドリブルで加速しようとも、常にボールは体の近くに保持され、極めて全速力に近い速度でボールを運ぶことができるのです。

動画

全速力でのドリブルにおいては『微妙な猫背』というのが非常に重要で、例えば遠藤保仁選手や中村剣豪選手のように首が前に出過ぎた場合、

ボール保持のエリアはスプリントする足の軌道の外となり、走る動作とボールを蹴る動作を別々に行わなくては行けなくなり、そのドリブルは『走りながら蹴る』ではなく、『蹴ってから走る』といった、様に動作が二つに分離してしまうのです。

これが、伊藤純也選手などを中心として『微妙な猫背』の恩恵となるわけですが、重要なのは『猫背だからこう』とか、『正しい姿勢が良い』とか、表面的な現象よりも、体の形によってボール操作時に体幹部とボールの距離は変化し、選手の姿勢はその距離に多大なる影響を及ぼしていることを知ることです。

骨盤の傾きや筋肉の柔軟性、さまざまな要因からボール保持の位置は決定されるため、あくまで今回紹介したタイプは代表的な事例にすぎず、例外的な事例も数多く存在します。

つまり、選手の姿勢を考える際『背筋は伸ばした方が良い』と一面的な視点にならず、その姿勢から生まれているプレーの長所、短所は何なのか?を今回学んだ知識をヒントに分析し、肉体改造におけるメニュー作りに役立てていくことが重要だということです。