サッカー選手のウォームアップは明らかに不十分。前半を失うという多大なる損失
2020/07/06
サッカーチームで一般的に行われるウォームアップは、ほとんどの場合で強度も量も足りていない。今回はその事について書きます。
計測しないから気づかない、前半の不調
日本のサッカー界では、試合45分前くらいからウォームアップを始めるのが一般的だですが、実は、この程度の時間では全身の筋温を十分なレベルまで上げる事はできません。
例えば、細かなコンディションの違いが数字となって現れる陸上競技などでは、試合2時間以上前からウォームアップを開始するのが一般的ですし、そのアップを疎かにすれば、記録はガクッと落ちます。
記録の文化が無いサッカーは色々と精密さに欠ける、その点、一分一秒を計測する陸上競技から学べば、より精密で質の高いウォームアップを知ることができます。
サッカーに話を戻すと、計測があまり発展していないサッカー界では、
『アップが不十分である』という点に対して『選手自身がゲーム中相当な『差』を実感する事がなければ関心を持ちにくい』という問題があります。
多くの選手は、『汗が出てくるくらいやれば十分だろう』と、ざっくりとした感覚のみで試合前のアップを終わらせてしまう。
しかし、下がっている体温をしっかりと上昇させ、身体の柔軟性も高いレベルに持っていく上で、45分という時間はあまりにも短い。
これじゃあ、どんなに質の高いメニューを組んでも、前半の序盤を60%ほどの状態でしか戦う事はできません。
さらに、どのチームも似た様なウォームアップしか行っていないのだから、その‘‘損失’’に気づく事も無い。ということは、
サッカー選手一人一人がこの部分をしっかりと意識することで、毎試合毎試合他の選手を出し抜いたロケットスタートが切れるということになります。
そんな訳で、
ここからは試合前半からロケットスタートを切るための最高のウォームアップを紹介します。『前半はあまりエンジンがかからない』なんて選手がいましたら、是非取り組んで見てください。
全身の戦闘態勢が整う水中ウォームアップ
サッカーのように、試合中同じ動作を二回と取らない競技は、要求される動きがあまりにも複雑です。
ウォームアップ終了時点で、全身の筋肉全てを高機能状態にしておくことが要求されます。
試合で起こりうる様々な動作の全てを、スムーズかつ力強く行える状態を作るために実、必要とされるウォームアップの条件は以下の三つです。
・全身の筋温上昇
・全身の筋肉の柔軟性確保
・全身の筋肉への負荷(刺激)
これらを全て満たすことができれば、『全身の筋肉の高機能状態』を作ることができます。
そして、これらを効率よく達成させために最高の手段となるのが、
’’プールでのウォーミングアップ’’です。
水中という特殊な環境でウォームアップを行うことで、上3つの要素うちの2つ全身の筋温上昇、全身の筋肉の柔軟性確保を一度に達成することができる。
詳しくは別のページに書いてあるので割愛しますが、端的に言うと水中ではその浮力によって、陸上よりもはるかに多くの種類の動作を行う事ができるため、より効率的に全身を緩める事が可能になります。
また、水中で運動を行うと、身体はその水温に対抗し、体温を上昇させようという働きが加速します。
プールから出た後に全身がポカポカと熱を帯びるのは、この働きによるもの。
この効果によって筋肉はより高い柔軟性を獲得し、高機能状態となります。(筋温と筋繊維の柔軟性を比例関係にある)
その後、軽い体幹トレーニングやフリーウエイトを行う事で筋肉全体に刺激を加え、全身の筋肉の爆発力を高めるメニューを取り入れれば、
・全身の筋温上昇
・全身の筋肉の柔軟性確保
・全身の筋肉への負荷(刺激)
の全てを効率的に満たす事ができる。後は、チームに合流して試合直前のウォームアップメニューをこなせば準備万端とまります。
チーム全体で行うウォームアップについて。
次は試合前に行う、チーム全体のウォームアップについても、書いていこうと思います。
本来、ウォームアップというのはその日の天候や試合の時間帯によって、最適な量、強度を変えなければならないもの。
そして、この外部環境を考慮して施す細かな調節は、『気温が◯◯度ならこう、天気が◯◯ならこう』といった様に、単純にグループ分けできるものではありません。
天候、気温、時間帯、疲労度、移動時間、多くの要素が複雑に絡み合って選手の外部環境は変化するのだから、その日ごとに最適量を考えながら行う事が要求されます。
こういった事情から、僕は試合前のウォームアップを担当するトレーナーは、選手と一緒にメニューに参加すべきではないかと思っています。
試合当日の環境によって筋温の上がり方や息の上がり方は変化するのなら、ウォームアップを任されたトレーナー自身がチームのウォームアップに参加し、自分の身体の変化を見ながら最適量を決める。
実際にやって見るとわかるのですが、通常のウォームアップより、こっちの方が明確にウォームアップの適量というものを捉える事ができます。
選手個々の差に関してはそれぞれの対応に任せるしかありませんが、チーム全体のコンディションをを外部環境に適応させるという意味では、最適化を図りやすい。非常にオススメのウォームアップ方法です。
おわり
試合前のアップに関して、個人的な準備、チームでの準備をざっくりと書くと、こんな感じになります。
細かい部分は読むのが大変なほどの文字数になってしまうので個々に任せたいと思うのですが、他のページにも参考となる記事はいくつかあると思うので、興味のある方は是非そちらの方も見て頂ければと思います。