30代の選手に人は『キレを失った』と言うが、具体的に何がどう変わるのか。1
2024/01/11
サッカー界で『動きのキレ』と言われる様子をもう少し具体的に表すなら、水平方向への瞬発力とも表現することができるでしょう。ストップ、加速、方向転換等、こう言った水平方向における瞬発力が失われると、その動きからは『キレを失った』という印象が漂います。そして、この能力は主に
・足をつく角度
・地面を蹴る力
という二つの要素で構成されています。
(地面を蹴る力と角度で水平方向への力は確定する)
地面を蹴る際にどれだけ軸足を鋭角に着き、力のベクトルを横向きの成分に変換できるかが、水平方向への移動スピードの鍵を握ります。
『力のベクトルの向き』はサッカー界ではあまり重要視されていない概念ですが、水平方向へ移動を競う競技では一般的な考え方であり、例えば陸上のクラウチングスタートや、ラグビーのスクラムの姿勢などがそれにあたると言えるでしょう。

鋭い方向転換が要求された時、力点となる軸足はなるべく体幹部分から離れた位置に設置した方が、水平方向への力は効率よく生み出されます。そして、それを体現するために必要なのは、もちろん心掛けではなく、股関節を大きく開くことができる柔軟性です。

股関節全体の柔軟性が向上すれば、何も意識する事なく、全ての方向転換、加速において少しづつ軸足が体幹部から離れた位置に出るようになり、軸足角度が鋭角になってきます。
年齢を重ねることでこの力が低下するのは、股関節の柔軟性が低下し、方向転換の際軸足が重心に近づいてくるためです。
軸足が重心に近づいてくれば、当然軸足と地面が作る角度は大きくなっていきます。
🔴軸足の鈍角化は全てのベテラン選手に見られる変化
軸足角度が鈍角化し、水平方向への力の変換が苦手になるという変化は、全ての選手において例外はありません。
以下の2枚の画像を見てください、この画像は若かりし(2004年)クリスティアーノ・ロナウド選手のプレー動画の中で、‘‘最も深い角度で軸足をついたシーン’’を切り取ったものです。



ストップ、方向転換、スタート時の軸足の角度は、45度を下回るほど鋭いものがいくつも発見できます。
しかし、現在のロナウドはどうでしょう。同じ条件で2018年の彼のドリブル動画を調査すると、


軸足角度がかなり大きくなっている事が確認できます。
おおよそ10分間(100近いプレー数)のプレー動画の中で、最も深い軸足角度を切り取ったものの、その角度は一度も45度以下に達する事はありませんでした。
レアルマドリード入団以降、ロナウドのプレーは『キレを生かしたウインガータイプ』から、大型センターフォワードタイプに変化しました。このプレースタイルの変化によって、34歳となった現在でもトップパフォーマンスを維持しているものの、動きのキレ(水平方向への瞬発力)という視点から見れば、やはり若い時代のそれと比べ確実に低下しています。
ちなみに、若い時代のロナウドに限らず、『キレがやばい』と一般的に言われる選手は、皆とてつもなく深い角度で軸足を地面につける事ができます。現代で言えばネイマールやムバッペなどがその代表です。
(ムバッペの軸足角度)
股関節周辺の柔軟性は、若い選手の特権の一つであり、その柔軟な股関節が選手の脚力を水平方向へと変換させるのです。この能力の低下は、ベテラン選手の動きに『若々しいキレ』を失わせる最も大きな原因です。