サッカー選手の『動きのキレ』に影響大。オモリの位置とオモリの量
2020/07/05
このブログでは、サッカー界で『キレ』と総称されるこの表現を、水平方向への瞬発力と定義しています。そして、今回はその『キレ』を生み出す要素として非常に重要な視点を、また一つ紹介したいと思います。
それは、選手の体についているオモリの位置です。
全く同じ身長、体重、筋肉量、体脂肪率でも、身体のどこが軽く、そしてどこが重くなっているかによって、水平方向への瞬発力は大きく変化します。簡単に説明すると、ピッチ上を移動する際、力点となる『足』側に重量が集中した方が、スムーズに平行移動を行う事ができると言う事です。
以下の二つの模型のように、身体の上部が重くなれば重くなるほど、急ストップや方向転換は困難になります。
具体的な部位に関しては、腹部のボリュームに比べ胸部のボリュームが足りない砂時計型の体型をした選手は、基本的に横揺れ、方向転換に弱くなる。
(水平移動を行う際、右の模型の方が安定する)
この模型の原理は、物理的法則に従うものなので、もちろん私達の身体にも全く同じ現象が起こります。例えば、ネイマールやロッペンなど、平行移動の爆発力に優れた選手のほとんどは、腹部に比べ胸筋のボリュームが小さく、胸から腹部までがストンと落ちたくびれの少ない比砂時計型の体型をしています。
トッップレベルになれば、ほとんどの選手が日常的に筋トレを行なっているものですが、どこの部位をどれくらい鍛えるかによって、身体の重量バランスは大きく変わってきます。
見栄えが良いからと言ってベンチプレスばかりに力を入れ、移動の効率性がどんどん低下することも珍しいことではありません。
●思った以上に影響力のある『体脂肪率』
『オモリ』と言えば、ここでは体脂肪の話もしておきたいのですが、
実は私達の身体を取り巻く体脂肪は、サッカー選手達が考えているよりもはるかに、動きのキレに大きな影響をもたらします。
それに気が付いていないであろう選手の一例として、パリ・サンジェルマンのネイマール選手がいます。
2020年段階のネイマール選手は、サントス時代に比べて体脂肪率が大きく増加しています。
結果、サントス時代の様な‘‘圧倒的なキレ’’を見せることはできなくなりました。以前、ネイマールの最も強力な武器は、誰もついて来れないスピードでの方向転換でしたが、身体のボリュームが一般選手と同等程度までアップしたため、以前のそれを完全に失っています。
彼の方向転換の角度が浅くなり、そのスピードも衰えたのには、この体脂肪率の増加が確実に大きな貢献をしています。
●加齢に注意、知らぬ間に高まる体脂肪率
また、この体脂肪率は、加齢に応じてどの選手もジリジリと高まっていくものです。
30代に突入した選手などは、知らず知らずのうちに大量のオモリを背負ってプレーしている事が珍しくありません。
そういった選手は往往にして、『昔と体重は変わっていません』と言うことが多いですが、体重が同じでも体脂肪率が上がっているのなら、それは出力をする筋肉と、単なるオモリでしかない体脂肪の割合が変わっているわけですから、100%動きのキレは低下しています。
たった3パーセントの体脂肪率の増加でも、70キロの体重の選手であれば2キロのオモリになりますからね。
試しに2キロのプレートを持って走って見てください。『こんなの身体のぶら下げてたら動けねーよ!!』と、誰もが感じるはずです。
『体脂肪率』は、関心がある選手とそうで無い選手で真っ二つに分かれる要素ではありますが、その影響度は、実際に競技パフォーマンスにとてつもないほどの影響を及ぼします。
もし、これを見ている選手の方で『以前のキレがなくなった』と自覚のある選手の方がいましたら、今一度、自分の体脂肪率を以前の状態と比較してみてください。
そこを見直すだけで、案外簡単に『キレのある動き』が取り戻されることも、頻繁にありますから。